めぐる。

2年前に母と死別し、優しい父・伸之（43）のもと、父子家庭で育った美歌（6）は、誰かに怒られてみたいと思っていた。「怒られる」ことを目的に通っているスイミングクラブで、さまざまないたずらを試みる美歌だったが、スイミング仲間の中森渉（8）に、ことごとく身代わりになられてしまう。一方、そんな美歌の思いを知らない伸之は、コロナ禍でますます大変になった子育てと仕事の両立に悩んでいた。

中川孝介（24）は新聞配達店に就職。しかし、同僚は全員50歳オーバー。話は噛み合わないし、親父ギャグにもついていけない。そんな中、退職する先輩の宇都宮から、新聞屋は街の警備員だと教えられると共に、配達先の1人である村上則子（71）を気にかけるように頼まれる。則子は2年前に夫が他界し、長らく暮らしている日本家屋で一人で過ごしていた。コロナ禍の今、家族が訪ねている気配がないことを察した中川は、ある策を練って、則子の家へ向かった。

伸之と同じ中堅企業で働く、若手サラリーマン・栄太郎（28）は、半年ぶりに出社した。他に出社している社員は誰もおらず、たった1人のオフィスになんだか心躍る栄太郎だったが、よりによって社長と遭遇してしまう。社長は部屋で1人断捨離をしていたのだ。余裕・威厳・カリスマ性のない社長は、社内でも嫌われ者。そんな社長から強引に断捨離を手伝わされ、逃げ出したくてたまらない栄太郎だったが、社長が捨てようとしていた、曰く付きの野球ボールを機に、社長に対してカッコよさを感じ始めて？！

女子バスケットボール部に所属している高校3年生の少女・百合子は、日々に退屈していた。寝ても寝ても睡魔は止まらず、長い休校期間の影響か体重も増加。さらにマスク生活のせいか、身だしなみにも無頓着になっていた。そんな百合子の唯一のポリシーが遅刻しないこと。しかし、ある日家の時計が壊れてしまい、バスに乗り遅れてしまう。気落ちする百合子だったが、目の前に目が覚めるようなイケメンを発見する。その日から、わざと遅刻してイケメンとの遭遇を目論む百合子の前に、続々とイケメンたちが現れ始め、百合子の生活が一変していく。

ホテルマンとして百戦錬磨の馬場武志だったが、早期退職を決めた。コロナの影響でホテルは閑古鳥、娘・百合子の高校卒業というタイミングもあって、決意したのだ。そんな武志のホテルマン生活最後の日、あるクレーマー客がやってきた。チェックインするや否や武志を指名し、シミがついた、虫が出たといっては呼びつけてくる。部下の茂木は、どんなクレームにも笑顔で応対する武志を改めて尊敬するが、クレーマーの正体は、武志しか知らない秘密の人物だった。

会議が思ったよりも早く終わったため、松岡の店に行こうとする栄太郎。しかしタクシーアプリでは配車できず、電車では間に合いそうにない。偶然居合わせた伸之が栄太郎のチェックのマスクに気が付く。伸之は娘・美歌と特別なケーキを買って帰る約束をしていた。車で会社に来ていた伸之は「いつもしないことに挑戦」しようと、栄太郎を松岡の店まで送ることにする。

バスケの試合帰り、百合子は祖母・則子と偶然出くわす。コロナ禍で「不要不急」として久しく会っていなかった百合子と則子は、二人で祖父・金一の墓参りに行くことにする。再会を楽しもうと思っていた二人だったが、乗り込んだタクシーの運転手・若月が最悪だった。二人の会話にズンズンと割り込んできては、自分語りを始めてしまう。しかも内容は共感できないものばかり。なんとか時間をやり過ごそうとする百合子と則子だったのだが、若月の勢いは止まることがなかった。

スイミングに通う美歌は、落ち込んでいた、友達・純恋の父（タクシー運転手・若月）に渉の話をして励ます。百合子は父親の荷物を受け取りに向かったホテルで、父の元部下・茂木と出会い、若月の話で盛り上がる。めざましテレビ音声スタッフの希は、新聞店の中川と愚痴を笑い話にする。それぞれの人生がめぐり、誰かの人生に少しエールを送る。それから数十年後。大人になった美歌がめざましテレビを見ていると、息子の颯斗が見慣れない、とあるマスクを不思議そうに見ていてーー