エンジェルハート

殺人マシンとして養成された少女、グラス･ハートは自殺を図るが、心臓移植を受けて一命を取り留める。一方、冴羽リョウは最愛のパートナー･槇村香を交通事故で亡くし、さらに香の心臓を何者かに強奪されていた。

目覚めたグラス･ハートは組織から逃亡し、夢で見た香とリョウに導かれるように新宿を目指す。しかし、ヤクザに絡まれた彼女は派手な事件を起こして警察に追われる身となり、海坊主が営む喫茶店に姿を現す。

海坊主から「香が戻って来た」と聞かされた冴羽リョウは、彼女を追って新宿の街をさまよう。その頃グラス･ハートは、リョウに会いたい一心でXYZの謎の暗号を解き、香の幻に導かれるように伝言板を探していた。

ドクの診療所で意識を取り戻したグラス･ハートは、自分に移植された心臓の持ち主･香と対峙する。その頃、逃亡したグラス･ハートを追う台湾マフィアのボス･李が極秘に来日するが、何者かに狙撃され…。

狙撃された台湾マフィアのボス･李が危篤に陥り、組織は狙撃犯と目されるグラス･ハートを血眼になって捜し回っていた。一方、逃亡を続けるグラス･ハートは生きる理由を見失い、拳銃で胸を撃ち抜こうとする。

リョウの前に、狙撃されたはずの李大人が現れた。狙撃されたのは双子の弟だったという。李はグラス･ハートが自分の実の娘であることを明かし、自殺を図った娘の命を救うために、香の心臓を奪ったことを告白する。

グラス･ハートがついにリョウの前に現れた。青龍部隊の兵士たちが血眼になって2人を捜す中、グラス･ハートは「奴らの狙いは私。私を殺して彼らに渡せばいい。私はあなたに心臓を返しに来たのだ」と告げる。

リョウは青龍部隊との銃撃戦に備え、グラス･ハートを連れて封鎖地区へたどり着く。そこには海坊主や冴子、ドクら仲間たちが集結していた。そこへ青龍部隊の斥候が潜入し、グラス･ハートは単身で立ち向かう。

グラス･ハートの命を狙う青龍部隊とリョウらとの戦闘が始まった。そんな中、グラス･ハートがかつて殺したと思い込んでいた信宏が現れる。信宏はグラス･ハートを守ろうとするが、彼こそが李本人を狙撃した男で…。

青龍部隊は李大人の配下である玄武部隊によって鎮圧され、リョウたちは窮地を救われる。リョウは、李大人を裏切ってその暗殺を指示し、グラス･ハートに狙撃犯の濡れ衣を着せた青龍部隊司令官の張を始末する。

李大人はグラス･ハートに自分が実の父親であることを名乗らない決意をし、リョウは自分が父親代わりになって彼女を引き取ることに。グラス･ハートは自分の名前が香瑩（シャンイン）であることを知る。

李大人の影武者として生きた双子の弟･謙徳の葬儀が行われた。リョウに葬儀に連れて来られた香瑩は、リョウに促されるまま謙徳の遺灰を海にまく。その姿を見て、李は謙徳が喜んでくれているに違いないと涙をこぼす。

親子として暮らし始めたリョウと香瑩。香の心臓を移植された香瑩は自分の命が長くないと感じ、リョウを悲しませるのではと不安を募らせていた。一方、ドクは香瑩と香のHLA抗原の型がほぼ同一であることを知る。

シティーハンターの仕事を再開させたリョウの依頼第1号は、遊び人風の若い女･凪砂。彼女はナンパした男に睡眠薬を飲ませて金を抜き取る常習犯だった。リョウはある考えがあって、この仕事を引き受けることにする。

シティーハンターの仕事に興味を持ち始めた香瑩は、リョウが見落とした依頼を見つけ、1人で依頼人に会いに行く。依頼人は小さな女の子で、父親を捜してほしいという。特徴を聞くと、リョウにぴったり当てはまり…。

ターニャの父親が姿を消したのは、彼が秘書をしていた国会議員に利用され、横領の濡れ衣を着せられたためだった。岸本を消せばいいと考えた香瑩は狙撃の準備を開始し、リョウは違う方法で事件を解決しようとする。

香瑩は、リョウと香が初めて出会った時の夢を見るようになっていた。新宿で若き日のリョウが何者かに撃たれ、それを助けたのが看護学生の香だった。だが、香の兄で刑事の槇村はリョウの身柄を引き渡すよう求め…。

香瑩は夢の中で、リョウと香の出会いを見守り続けていた。意識を取り戻したリョウは、意識の戻らないフリをして、凶器を隠し持って身構えていたが、香は眠り続けるリョウを胸に抱き寄せ涙をこぼすのだった。

幼い頃から殺人マシンとして育てられた香瑩と信宏は、人間らしい喜びを知らずに生きてきた。それを憂うリョウは、正道会の陳侍従長が開店した店で2人を働かせることにする。しかし、そこへ根堀組長と若頭が現れる。

茅野夢という少女から、父親を殺した犯人を捜してほしいという依頼が入る。彼女はかつて香瑩が暗殺した男の娘だった。夢は父親の本当の正体も調べてほしいという。リョウは香瑩にこの依頼を断っても良いと言うが…。

夢がバイオリンコンクールに出場することになり、自分の演奏をぜひ聴いてほしいと香瑩を招待する。ドッグウォーカーが夢の命を狙うには絶好の機会だが、香瑩は夢に警護を気付かれないよう最前列の席で彼女を見守る。

ドッグウォーカーの罠にはまった夢は、自分の父親を殺したのがグラス･ハート、つまり香瑩だったと知ってしまう。大きなショックを受けた夢は、さらに香瑩を殺すよう仕向けられ、眠る香瑩に銃を向けるが…。

ドッグウォーカーを倒して夢と対峙した香瑩は、夢に拳銃を握らせると、自分を撃って父親の仇を討つように迫る。だが、銃から伝わってくる香瑩の鼓動が夢を包み込み、夢は泣きながら香瑩の胸に飛び込むのだった。

香瑩は自分の過去を回想していた。暗殺者として人を殺めることに苦しんで自殺を図った彼女は、新しい心臓を与えられ、導かれるように訪れた新宿で冴羽リョウと出会った。そして今、人生が大きく変わろうとしていた。

リョウと香瑩は、食堂の主人から自分と双子の弟を一緒に殺してほしいという依頼を受ける。自分を捨てた両親や世間を恨んで手の付けられない極道になった弟を止めるには、一緒に死ぬしかないと考えたのだった。

極道の弟を案じる兄から、兄弟一緒に殺してほしいと依頼を受けたリョウと香瑩だったが、その弟が組の本家から命を狙われていることを知る。香瑩はリョウが本当に兄弟を殺すつもりなのか、真意を計れないでいた。

香瑩はある日公園で画家の夏目という男に出会い、なぜか特別な胸の高鳴りを感じる。その後、街角で彼の個展のポスターを見掛けた香瑩は、そこに描かれた絵に目を奪われた。それは若き日の香の姿だったのだ。

香の中学時代の同級生だった夏目に出会い、初めての恋をした香瑩。思い切って告白はしたものの夏目には会いに行かず、香瑩は一人で悩んでいた。そんな中、夏目から「今夜画廊に来てほしい」と連絡が入る。

妹を捜してほしいと依頼をしてきた女性は何と香の姉･早百合だった。香が3年前に亡くなったと聞かされ愕然とする早百合は、香の心臓が香瑩に移植されていると聞いても、その現実を受け入れることはできなかった。

香の姉･早百合は、香瑩に危険なシティーハンターの仕事をやめさせ、最高の医療を受けさせるためにニューヨークに連れて帰りたいと言いだす。だが香瑩は、香に成り代わってこの街への熱い思いを早百合に語り始める。

早百合は夢の中で香の記憶をたどっていた。警察官である義理の兄･槇村が裏でリョウと組み、シティーハンターとして活動していたことを知った香は、父が殉職した時のような辛い思いはしたくないと槇村に訴えるが…。

かつて信宏と共に青龍部隊にいた仲間･白蘭が、ある日突然彼の前に現れる。信宏が死んだと思っていた白蘭は、彼が生きていたことを知って喜びの涙をこぼす。だが、白蘭は自分の任務について一切語らず…。

白蘭が暴力団に潜入し、幹部暗殺の手引きという危険な任務についていることを知った信宏は、自分も組織に潜入しようとする。だが香瑩は、組織に面が割れている信宏の代わりに自分が動くと言って止めようとする。

暴力団幹部･早川暗殺の手引きをするために隼鷹会に潜入した白蘭だったが、今では早川を実の父のように慕い、組織を裏切ってでも彼の命を守ろうとしていた。香瑩からそれを聞いた信宏はショックを受ける。

信宏の助けにより朱雀の暗殺者は撃退したが、仕掛けられていた爆薬で早川の別荘は炎に包まれていた。白蘭は早川を助けようと信宏の制止を振り切って中へ飛び込むが、そこには拳銃を構えた早川の姿があった。

新宿西警察署署長･冴子の自宅に、指名手配犯の資料など捜査の重要な手掛かりが何者かから届けられた。冴子は、それが1カ月ほど前から自分に付きまとっている不思議な女の子の仕業ではないかと感じていて…。

新宿繁華街の片隅で、海坊主は魅力的な声をした不思議な少女に出会う。その少女こそが冴子をも腑抜けにしてしまった少女･ミキだと知った香瑩とリョウは、少女が新宿地下街跡の廃墟に住んでいることを突き止める。

ミキを追って地下街跡までやって来た香瑩。ミキには、香瑩の中にいる香の姿が見えていた。香は「ミキの母も自分と同じく、心だけの存在となって、いつも一緒にいるのだ」と話し、死というものを伝えようとする。

来日中の女優、ジョイ･ロウから、休養のため1週間自分に成り代わって予定をこなしてほしいとの依頼を受けた香瑩。だが、暴漢に襲われて誘拐されそうになる。何者かがジョイを狙っているということになるが…。

消えたジョイ･ロウを捜す香瑩とプロデューサーの元に冴子がパトカーでやって来るが、そこにも敵の襲撃があり、パトカーが爆破されて大騒ぎとなる。その頃ジョイはキャッツアイを訪れ、匿ってほしいと頼んでいた。

ミキが住んでいた地下街跡からの帰り、バーに寄り道するジョイと香瑩。ジョイは愛した国王の落とし胤であるミキが幸せだと分かった今、自分がすることは全て終わり、自分の居場所はもうこの世にはないと語る。

携帯電話を落としたリョウに拾い主から連絡が入る。拾った女性はニュースキャスターで、携帯に何人もの女性から電話があったためリョウをホストだと思い込み、ホスト業界の取材に協力してほしいと頼んでくるが…。

坂東からリョウがシティーハンターだと聞かされても信じない朋美。その帰り、朋美は何者かに誘拐されてしまう。一方のリョウは、昨晩自分を襲ったヒットマンが傭兵部隊･黒豹の一員であることを知り驚愕していた。

伝言板を見に来たリョウと香瑩の前に楊が現れる。楊はリョウを無理やり連れ出すが、リョウはすぐに逃げてしまったため、後を追ってリョウの自宅を訪れる。楊が会いに来たのにはほかにも理由があったのだ。

生物兵器のワクチンを作らせるために楊が軟禁していた学者たちが、何者かに連れ去られてしまう。それが傭兵のマックスの仕業だとにらんだ楊は、リョウたちに彼を捕まえさせ、黒幕と接触するのを待つことにする。

チェンが自分を騙していたことを知った楊は、怒りのあまり海に飛び込み、チェンがいる船に泳いで向かって行ってしまう。リョウと香瑩がその後を追って船に到着すると、既にチェンと対峙する楊の姿があった。

街で偶然ぶつかった女性が、香瑩を見るなり「もうすぐ暴走車が渋滞に突っ込んで大惨事になる」と言って助けを求めてきた。しばらくすると彼女の言う通り暴走車が走って来て、香瑩は何とか危機を脱するが…。

上司からの縁談を断わって恋人と結婚し、春日村の駐在所に左遷された島津。占い師の麗子は、この結婚が島津の人生を狂わせ、やがて死に至ることを予見していた。それを知った信宏は、島津を救おうと奔走する。

銃声を聞いた島津は自転車で現場へ急ぐ。一方、香瑩も犯人と思しき男を追っていた。向かう先はどちらも島津が拳銃で撃たれて死ぬと麗子が予知した場所。現場では信宏が待機していたが、先に現れたのは…。

ワクチンが完成して新宿に帰って来た楊芳玉だが、楊には香瑩をある結婚式に連れて行くというもう一つの目的があった。訳も分からず式場にやって来た香瑩は、控え室で花嫁のスゥチンを見て涙が止まらなくなる。